F1の予選のおもしろさについて

最近、急にF1がすごくおもしろくなった。きっかけは、日曜日にいつも朝寝をするせいで、夜なかなか眠れないものだから、テレビを見ていてたまたまF1の衛星中継を見たのが、すっかりはまってしまった。

その時はちょうどスペインGPの時で、すごい雨のなかレースをやっていたのだが、ひどいコンディションでばたばたとリタイアが出て最後まで残ったのがわずか6台という過酷な状況のなかで、なぜか1台だけ水を得た魚のように喜々として走っている車がいた。それがほかの車の走りとあまりに違うものだから、不思議に気を引かれて結局最後まで見てしまった。何も知らなかったのだが、後からそれはこのところずっと不調だったフェラーリのシューマッハーというドライバーだったと知った。ゴクミの恋人アレジは、その時2位だった。

その次に見たのが、次のカナダGPの予選だった。F1の決勝は見たことがあっても、予選は見たことがないという人がほとんどではないかと思う。が、はっきりいって予選はすごくおもしろかった。もしかしたら、決勝よりもずっとおもしろいかもしれない。

予選というのは、全体の制限時間が決まっていて、そのなかで各ドライバーがまた自分の制限時間を持っている。自分の持ち時間は、どのように使っても構わず、予選の時間のなかでいつ走るかを決めるというのが重要なポイントになっている。マシンを調整しながらできるだけ時間を有効に使うためには、人の走りを見てそれを判断の材料にする。というわけで、ピットに待機したまま、じっとモニターを見る、という状況が出現する。皆がにらみ合ったまま誰も動かず、コースには1台も車が走っていない、という状況にもなる。

大御所はなかなか動かないもので、2流くらいのドライバーがまず走りだす。それを他のすべてのドライバーがモニターでじっと凝視している。その走りを見て、そのタイムを見て、路面の状態を読み、計算する。そして、いい状態だと判断すれば、待機していたドライバーが一斉にコースに出るのである。かわいそうなのは、さっきの2流のドライバーである。瞬間的に1位のタイムを出して、すぐにあとから走った大御所たちにひっくり返されてしまうのだから。
とにかく、ドライバー同士の精神戦はかなりの「見物」である。

かといって、後から走ればいいというわけでもない。誰かがクラッシュすれば路面は汚れるし、コースが一時的に閉鎖されてしまうのでそのとき走っていたタイムは無効になってしまう。また、どの程度までタイムを上げるかというのも難しい。あんまり無理をしすぎるとクラッシュしてしまう。カナダでは、同じベネトンのアレジとベルガーが2人ともクラッシュしてびっくりした。

もちろん、決勝も何が起こるかわからないので、おもしろい。スペインGPでは雨のなかすごい走りを見せてダントツの優勝をしたシューマッハーが、カナダでは予選でも3位につけてがんばっていたのに、なんと決勝でエンジン・ストールしてスタートできず、2列目から一気に最後尾スタートになってしまった。一体、どうなっているんだ?

今は、あのアイルトン・セナもいないし、ホンダも撤退してしまった。(もっとも、復帰するという噂もある。)今トップになっているチームはルノーのエンジンだが、そのルノーもF1から撤退すると最近報道された。不況の影響なのか寂しくなる一方のF1だが、300km/h近い速度で走るマシンをあやつるドライバーは、やはりただものではない。そのただものではないレースを中継で数週間ごとに見れるのだから、やはりF1はおもしろい。
まだF1の予選を見たことがない人は、ぜひ一度見てみてください。

(Jun. 19, 1996)

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