「世界のサカモト」教授のライブに行ってきました

1996年8月28日、渋谷はオーチャードホールに、「教授」または「世界のサカモト」こと、坂本龍一のコンサートに行ってきました。いやー、本当にすごかったです。参りました。あんなのって、初めてです。
いや、確かに私が彼のライブに行ったのは、今回が初めてだったのですが、まさしく世界レベルの音楽を目の当たりにしてしまった、という感激と興奮がいまだにまだ冷めないでいます。
本当に、不思議な体験でした。

今回は、彼の弾くピアノと、チェロとバイオリンという、クラシック編成のトリオだったのですが、それだけであんな音楽ができるというのは驚異的でした。 編成は完全なクラシックであって、しかもクラシックでなく、ジャズでも、ポップスでもなく、前衛音楽でもなく、それは単に「坂本龍一の音楽」としかいえない、全くジャンルにくくることのできない世界でした。
非常に高度な音楽でありながら、同時にポップであり、非常にリリカルなメロディーでありながら、前衛的であり、それが全く矛盾することなく、ただ純粋な「音楽」としてそこにある、という感じでした。
彼は、天才です。

コンサートは、全神経を鋭敏にして静かに聴き入る形で進んでいきました。それが、徐々に足元から熱い感動が体に沸き上がってきて、最後には聴衆全員が歓喜のスタンディング・オベイジョンでした。
私が行ったのは3日間の東京公演の中日だったのですが、ちょうどその日はインターネットで全世界に同時中継をしていたそうです。

彼の音楽は、こういっては何ですが、決して「売れ線」ではありません。それは高度で難解な音楽であるとさえ思います。しかし、そんな本質的な音楽をポップな形に見せてしまうのが彼の力量なのだと思います。それにしても、その彼の音楽を理解し、評価する人達が世界中に多くいること(数の単位がわからないので「多く」としかいえませんが)は、実は私が今非常に混乱している原因になっています。
何を隠そう、私は今までずっと、完璧なるメジャーコンプレックスでした。とにかく私が好きになるものはすべてマイナーなものばかりだったのです。だから当然、YMO時代には私は全く聴きませんでした。YMOの何がすごいのか全く理解していなかったので、同級生の男の子が「僕はYMOが解散したときに日本の音楽は終わったと思っている」と豪語していたのも何のことだか全くわかりませんでした。

今思えば、彼を聴くチャンスは何度もありました。。その同級生もそうだし、「戦メリ」ブームもあったし、以前の恋人は坂本龍一が好きで「戦メリ」をピアノで弾いたりしていました。でも、なぜか私はずっとそのまま通りすぎてきてしまいました。だから、コンサートの会場で、私は「ここまで来るのに、ずいぶん時間がかかってしまったなあ」という感慨をかみしめていました。
ここまで来るのには、彼の音楽がより本質的なものになり、私がメジャーコンプレックスを克服するための時間が必要だったのだと思います。

そして、このときが来たことを、私は心から幸せに思っています。
いつか、ニューヨークで彼と個人的に会える時が来るといいな。
なあーんて。

(Sep. 1, 1996)

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