いまどきのユースホステルのすすめ

ユースホステルというと、まずどんな人でも最初に思うのが、「フォークギターを弾きながらみんなで歌をうたう」というイメージである。それから、自己紹介をして、みんなでゲームをして・・・。つまり、「ミーティング」である。あれがどうしてもね、という人がとてつもなく多い。確かに、私が10年前に北海道に行ったときはまだそれをやっていた。ただ、当時はあまり旅の経験もなかったし、北海道という独特な旅人文化のある地域にあってはそれほど違和感を感じずに、一緒に歌をうたっていた。それもなかなか楽しかった。

「ユースホステル先進地域」の北海道は、日本で唯一ユースホステルの経営が成り立つところらしく、その後大発展を遂げた。いまではいくつもの超豪華、超きれいなユースホステルがあるらしい。しかし、それは例外中の例外で、その他の地域においてはみんながんばってほそぼそと(かどうかはよく知らないけれど)続けている。もともとはお酒も飲めなかったが、最近はビールの自動販売機を置いているところも多く、かなり自主性に任されている。ミーティングもない。ただそのかわり、談話室のようなところは残っていて、同宿者が自然発生的に交流できるようになっている。

今までの私の経験だと、そのようなところで話される内容というと、「ユースホステルおたく」による「どこのユースの蟹がおいしかった」とか「どこのユースのふろがよかった」などという会話が多かった。そんなのは、全くばかげた話だと思う。だいたい、ユースホステルなんていうのは、食費や宿泊費にお金をかけたくないから泊まるのである。そこによい食事やよい設備を求めてどうするんだ、と言いたい。それに、こっちは自分なりの用事や理由があってたまたまその土地を訪れているのであって、ユースホステル自体に興味を持っているやつなんて、あんたぐらいだよ、と思う。そんな会話に幻滅して、泊まる度に「もうこれで最後にしよう」と固く決心するのだが、一人旅が多い上にお金もかけたくないので、1年ぐらいたつとついまた泊まってしまうのだった。

ところが、最近私の中のユースホステルの評価ががぜん高くなった。なぜかというと、全く新しい価値を見い出してしまったからである。
というのは、日本人の若者のユースホステル離れが甚だしく進む中で、ユースホステルの主な利用者は外国人トラベラーになってしまったからだ。外国人に人気がある観光地のユースに泊まると、日本人よりも外国人のほうが多いなんてことはざらにある。そうなると、がぜんそこは国際交流、英語によるディスカッション大会の場と化してしまうのだ。これは、本当におもしろい。

まず、第一に、さまざまな国の、さまざまなバックグラウンドの人たちが集まる。圧倒的に英語を話す人が多いが、それもひとりひとり全く背景が違う。英語のネイティブからして、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、といるのである。その中でも、現在日本を旅行中の人と日本在住で英語の教師をしている人(これが実に多い)に分かれる。
それから、第三国からアメリカへの移住組や、日本人でアメリカ、イギリスへの留学組。そして、「第二外国語としての英語」組。(ほとんどの日本人と、すべての非英語国民はここに含まれる。) これらの人たちが、一つ屋根の下で一夜をともにする安心感もあって、世間話や議論に花をさかせるのだから、もうおもしろくない訳がない。

第二に、個人的に旅をしている人が多いので、ひとりひとりが自立していて、話をするとなにかしら非常に面白い話をしてくれる人が多い。個人として自立しているということは、一人の人間として語るべきことを持っているということである。人と人との交流は、お互いが自立していて初めて成り立つ、ということを知ることにもなる。

私は少し前から英語を勉強していて、普段は日本人同士でばかり練習をしているのだけれど、それがユースホステルなどという思いもかけないところで実地練習をすることになり、しかもそれが結構いろんな人と打ち解けて深い話もできたりしたものだから、もう大喜びだった。台湾の人においしい中国茶を入れてもらったり、アメリカ人の大学生に歯磨時にデンタルフロスを貸してあげたり、バックパッカーのイギリス人にいいハイキングコースを教えてあげたり、実に自然な関係で一緒に過ごすことができた。住所交換もして、初めて外国人の友達ができた。

「駅前留学」のあなた!外国の友達は欲しいけど、軟派目的のような人は嫌だ、というあなた!「異文化」を体験したいけど、お金も暇もなくて海外旅行にはなかなか行けないというあなた!
日本のどこかの観光地にあるユースホステルに、泊まりに行ってみてください。きっと、どこかの国の人が一緒に泊まっています。そして、自分が今考えていること、その人が今考えていることを話してみてください。ペラペラと流暢に話すことが必ずしも誠実に伝わるとは限りません。その人自身の経験から来た、その人自身の飾らない考え、思いというものが、きっと国や文化や年齢や性別を超えて伝わることがあると思います。そして、人間誰もに共通する何かを感じることができるかもしれません。自分から興味をもって、わざわざ日本に来ている人たちです。こちらがちょっと心を開けば、きっと向こうも喜んで心を開いてくれます。

GOOD LUCK!!

*ちなみに、私が今回泊まったユースホステルは、「日光杉並木ユースホステル」です。
日光市街や駅から少し遠いけれど、あたたかい雰囲気の気さくなところです。

(JAN. 13, 1997)

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